DRC設定とよくあるミス対策:KiCadAltium別の実践設定例(DRC・KiCad・Altium)
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- DRCの基本と役割
- よくあるミスと発生原因・対処法
- DRCの基本設定項目(実務で必須のルール)
- ツール別の設定例と運用ポイント
- 自動チェックの運用フロー(実務例)
- 見逃しやすいチェックポイントと対策
- 最終チェックリスト
- まとめと実践アドバイス
プリント基板(PCB)設計で製造トラブルや実装不良を防ぐために不可欠なのがDRC(Design Rule Check:設計ルールチェック)です。DRCは設計データが製造可能な範囲に収まっているかを自動で検査する機能で、設計ミスを早期に発見して手戻りを減らします。この記事では、初心者にもわかりやすく用語を都度説明しながら、よくあるミス、実務で使えるDRC設定例、ツール別の運用ポイント、最終チェックリストまでご紹介します。DRCの重要性については、こちらの記事で紹介しています。
DRCの基本と役割
DRCはCAD(基板設計ソフト)上で設定したルールに基づき、配線幅やクリアランス(間隔)、ドリル径、ソルダーマスク開口などの違反を自動検出する機能です。ここで出るエラーは「製造できない」「実装で問題が起きる」といった致命的なものが多いため、出力前に必ず解消する必要があります。
ここで用語について少し解説しておきます。
- クリアランス:導体同士や導体とパッドの最小間隔。
- トレース幅(配線幅):銅箔の線の太さ。流せる電流の大きさや製造性に影響します。
- ビア(via):層間を接続する穴。2層基板や、スルーホールは基板を貫通するタイプです。
- ソルダーマスク:はんだ付けを防ぐ緑などの膜。
よくあるミスと発生原因・対処法

ここでは、DRCで発生するエラーと、エラーの原因について紹介します。
クリアランス不足(配線やパッドが近すぎる)
原因:製造業者の最小クリアランスのルールを満たしていない。ネットクラス(信号ごとのルール)を設定していない。
対処:製造仕様に合わせて最小クリアランスをDRCに設定し、ネットクラスで電源・信号ごとにルールを分けます。
配線幅が細すぎる(電源ラインや高電流ライン)
原因:流そうとしている電流に対して、配線が細すぎる。
対処:電源や大電流ラインはトレース幅を太くする(例:0.5mm以上)か、銅のパターンを厚くします。どれくらい太くすればいいかは、流したい電流の大きさに応じて決まります。オンラインの配線幅計算ツールで簡単に調べられます。
ドリル径・ビアサイズの設定ミス
原因:最小ドリル径を下回る設計、ビアインパッド(パッド内にビアを配置すること)を無処理で配置。
対処:製造業者の最小ドリル径(例:0.2〜0.3mm)を確認し、ビアインパッドが必要なら埋め処理(via fill)や埋め後の平坦化を指定します。
シルクがパッドやビアに重なっている
原因:シルクレイヤーのクリアランス設定不足。
対処:シルクと銅の最小距離をDRCで設定し、極性マークや部品番号はパッドから離して配置します。
ソルダーマスクの開口ミス(覆われすぎ/開きすぎ)
原因:マスク拡張(solder mask expansion)設定の誤り。
対処:マスク拡張値を製造業者の推奨に合わせ、狭ピッチ部品はペーストマスクと合わせて確認します。
外形線が閉じていない・重複している
原因:外形(ボードアウトライン)が複数線や断線で定義されている。
対処:外形は単一の連続線で出力し、Gerber出力前にビューアで確認します。
DRCの基本設定項目(実務で必須のルール)

以下はほとんどのプロジェクトで必須となるDRC設定項目です。数値はあくまで一般的な目安です。必ず製造業者の仕様に合わせてください。JLCPCBの仕様はこちらを参照してください。
一般ルール(目安)
- 最小配線幅:0.15〜0.2mm(4〜8mil)
配線が細すぎると製造で切れたり電流容量が不足するため、製造安定性と電気的余裕を確保します。
- 最小クリアランス:0.15〜0.2mm
パターン間のすき間が狭いとショートやはんだブリッジの原因になるため、製造公差と信頼性を確保します。
- 最小ドリル径:0.2〜0.3mm(製造業者依存)
小さすぎる穴はドリル折れやめっき不良を招くため、製造可能性と信頼性を担保します。
- 最小シルク線幅:0.15mm
細すぎるシルクは印刷で欠けやすいため、文字やマークの視認性と印刷品質を保ちます。
- マスク拡張(solder mask expansion):0.05〜0.1mm
マスクの収縮や位置ずれを見越して余裕を持たせ、はんだ付け不良や露出不足を防ぎます。
- アニュラリング(ランドの余肉):0.1mm以上
ドリル穴周りの銅が不足するとはんだ付け強度やめっきが不安定になるため、信頼性を確保します。
ネットクラス(信号別ルール)例
- 電源(Power):配線幅 0.5〜1.0mm、クリアランス 0.2mm
電流を安定して流すために太めにし、電圧降下や発熱を抑えます。
- 一般信号(Signal):配線幅 0.2mm、クリアランス 0.2mm
電流が小さいため細めで十分で、基板スペースを有効活用できます。
- 高速信号(High-speed):インピーダンス制御が必要ならスタックアップ(層構造の見直し)と目標インピーダンスを指定
速い信号は反射や歪みが起きやすいので、伝送特性を合わせて信号品質を保ちます。
ツール別の設定例と運用ポイント
KiCad(キキャド)での運用ポイント
KiCadでは「基板設定」→「デザインルール」でルールを定義します。ネットクラスを作成して電源や信号ごとに幅とクリアランスを割り当て、こまめにDRCを実行して小さなミスを早期に潰す運用が有効です。
Altium Designer(アルティウム)での運用ポイント
Altiumは詳細なルール設定とリアルタイムDRCが強力です。スタックアップ(層構成)やインピーダンスルールを明確に定義し、OutJobにDRCレポートを組み込んでリリース時に自動検証する運用が推奨されます。重大度(Severity)を設定して、致命的な違反はリリース不可とするのが良いでしょう。
その他CAD(例:EAGLE、Quadceptなど)
多くのCADはDRC機能を持ちます。製造業者のMRC(Manufacturing Rule Check)に近い設定を用意できる場合は、DRCと併せてMRCも実行しておくと安心です。ツールごとに用語や設定場所が異なるため、プロジェクトテンプレートを作成して標準化するとミスが減ります。
自動チェックの運用フロー(実務例)
- プロジェクト開始時に製造業者の設計ルール(データシート)を取得し、DRCテンプレートを作成する。
- 部品配置完了後、ネットクラスを割り当てて初回DRCを実行する(早期発見のため)。
- 配線完了後、全項目のDRCを実行し、重大エラーをすべて解消する。
- Gerber出力前に最終DRCとMRCを実行し、レポートを保存して製造に添付する。
- 製造業者からのDFM(Design for Manufacturing)指摘は即時反映し、再DRCを実行する。
見逃しやすいチェックポイントと対策
GNDベタの孤立(アイランド)
大きなベタが分断されて小さな孤立領域(アイランド)になると、はんだ付けや熱特性に問題が出ます。DRCで「最小ポリゴン面積」や「接続性」をチェックし、必要ならスルーホールやサーマルリリーフで接続します。
シルクのフォントやアウトラインの問題
ラスタフォントが正しく変換されず潰れることがあります。アウトラインフォントを使うか、シルクをパス化して確認してください。
ビアインパッドの未処理
BGAなどでビアインパッドを使う場合、埋め処理や埋め後の平坦化を指定しないと実装不良になります。DRCでビアインパッドの存在を検出し、製造指示を明記します。
最終チェックリスト
- 最新のRevで設計しているか。
- 製造業者の最小配線幅・クリアランス・ドリル径をDRCに反映しているか。
- ネットクラスを定義し、電源・信号ごとにルールを割り当てているか。
- Gerber出力前にDRCとMRCを実行し、レポートを保存したか。
- シルクがパッドやビアに重なっていないか。
- ソルダーマスクとペーストマスクの開口が適切か。
- 外形線が閉じており、長穴やスロットが正しく指定されているか。
- ビアインパッドや埋め処理が必要な箇所に製造指示を入れているか。
- インピーダンス制御が必要な場合、スタックアップとターゲット値を明記しているか。
- DRCで出たエラーのスクリーンショットと修正履歴を保存しているか。
まとめと実践アドバイス
DRCは「設計ミスを見つける最後の砦」ではなく、設計プロセスの早い段階から使うべきツールです。ネットクラスの活用、製造業者仕様のテンプレート化、定期的なDRC実行を習慣化することで、製造トラブルや納期遅延を大幅に減らせます。最終的にはGerber出力前のDRCとMRCを必須工程に組み込み、製造業者とのコミュニケーションで疑問点を解消してから発注してください。
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