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基板仕様設計及び性能評価

初出公開日 Sep 27, 2024, 更新日 Dec 07, 2024

1 min

1.JLCPCBにおける基板の構造と誘電率について


基板は、電子部品を電気的に接続し、機械的に支持するための重要な要素です。その基本構造は、導電性の銅層と絶縁性の基材から成り立っています。基材として最も一般的に使用されるのはガラスエポキシ樹脂(FR-4)です。誘電率(相対誘電率)は基材の重要な特性の一つであり、電磁波の伝播速度や信号損失に直接影響を与えます。低誘電率の材料は信号が速く伝播し、損失も少なくなるため、特に高周波回路に適しています。

図1 JLCPCB基板製品イメージ


誘電率(εr)は、材料が電場に対してどのように反応するかを示す指標で、材料の電気的な絶縁特性を表します。誘電率が高い材料は、より多くの電荷を蓄える能力があり、逆に誘電率が低い材料は電荷を蓄える能力が低くなります。高周波信号では、誘電率のわずかな違いでも信号損失が増加します。設計者は、基板材料の誘電率だけでなく、誘電正接(loss tangent, tanδ)も考慮する必要があります。tanδは、信号が基板を伝播する際に失われるエネルギーの割合を示します。損失が小さい材料(低tanδ)を選定することで、特にRF回路や高速信号伝送において、信号品質を向上させることができます。

プリント基板の誘電率は、使用する基板材料に依存します。一般的なPCB材料の誘電率は次のように分類されます。

FR-4:最も一般的な基板材料で、誘電率は約4.5です。これは多くの用途で適していますが、高周波設計には限界があります。

低誘電率材料(例:Rogers系材料):誘電率が2.2~3.5の範囲で、高速デジタル信号やRF回路に適しています。これにより、信号損失が少なく、伝播遅延も小さくなります。誘電率と基板の性能には密接な関係があります。誘電率が低いほど、信号伝送の歪みが少なく、データ伝送速度が向上します。これに対して、高誘電率材料は静電容量が大きくなりやすく、ノイズの影響を受けやすくなるため、高速・高周波回路では不利です。したがって、基板設計においては、使用する材料の誘電率を正確に理解し、用途に応じて最適な素材を選定することが求められます。


PCB設計では、シミュレーションツールを使って、特定の誘電率に基づいた信号伝送特性の確認が可能です。例えば、EMCやSI(信号整合性)シミュレーションツールを使うことで、異なる材料の誘電率が伝送特性に与える影響を事前に評価できます。また、基板の製造公差により、実際の誘電率は設計値からわずかにずれる可能性があります。これを考慮し、設計段階である程度のマージンを持たせることが推奨されます。


2.基板の種類ごとの耐熱性について


基板には、FR-4、ポリイミド、テフロンなど、様々な種類が存在し、それぞれの耐熱性に差異があります。FR-4は標準的な基材であり、150~180℃の耐熱温度を持っています。これは、一般的なエレクトロニクス用途において十分な性能を提供しますが、より高温に耐える必要がある用途には不向きです。

ポリイミド基板は、FR-4に比べて優れた耐熱性を持ち、最大で300℃に達する場合があります。このため、宇宙用途など、高温環境下での使用に適しています。テフロン基板は、優れた耐熱性(250~300℃)とともに、低誘電率や低損失特性を持っているため、マイクロ波や高周波通信システムに適しています。これらの基材を選定する際には、耐熱性だけでなく、他の性能特性とのバランスも考慮する必要があります。

3.基板の強度計算と設計技術について


基板の設計では、電気的特性だけでなく、機械的強度も重要な要素です。基板の強度計算には、材料のヤング率、ポアソン比、層間剥離強度などが考慮されます。これらの物性値を基に、基板の応力や変形を評価し、部品の重量や外力に耐えられる設計を行います。

特に多層基板では、層ごとの熱膨張差による応力が蓄積されやすく、層間剥離や亀裂の原因となることがあります。そのため、熱膨張係数の異なる材料を組み合わせる場合には、強度計算を慎重に行い、製品寿命を考慮した設計が求められます。


4.基板の熱膨張係数と設計への影響


基板の熱膨張係数(CTE)は、温度変化によって基板がどの程度膨張・収縮するかを示す指標です。FR-4基板のCTEは通常、縦方向で10~20 ppm/℃、横方向で40~60 ppm/℃となっています。基板が加熱されると、CTEに基づいて膨張し、特にはんだ接合部やビアホール周辺に大きな応力がかかります。

CTEと基板設計の関係性を考慮することは非常に重要です。異なる材料を積層した多層基板では、各層のCTEが異なるため、層間応力が発生しやすくなります。この応力が蓄積されると、長期的には基板の層間剥離やクラックの原因となります。そのため、CTEが異なる材料を組み合わせる際には、応力分散を考慮した設計や、基板全体のCTEバランスを取ることが必要です。また、高温環境下での使用を想定する場合には、低CTE材料を選択することで、熱応力を最小限に抑えることが可能です。


5.全体の考察とまとめ


基板設計においては、電気的特性、機械的強度、熱特性のすべてを総合的に考慮することが不可欠です。誘電率は信号伝送の品質に直接影響を与え、耐熱性や熱膨張係数は基板の耐久性や信頼性に関わります。特に多層基板や高周波回路の設計では、各層の材料特性を詳細に把握し、最適な組み合わせを選定することが重要です。これにより、基板の長期的な性能維持と高品質な信号伝送が可能となり、製品全体の信頼性向上に寄与します。





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