多層基板における開発背景及び応用領域
1 min
1.多層基板の開発経緯および構成
多層基板は、複雑化する電子機器のニーズに応えるために開発された技術です。従来の片面基板や両面基板では、配線の密度や複雑さに限界がありましたが、電子機器の高機能化や小型化が進む中で、より多くの配線層を持つ基板が必要とされました。これにより、1960年代後半から1970年代にかけて、多層基板(MultilayerPCB)が登場しました。
図1 JLCPCBの製品イメージ図
多層基板の基本的な構成は、複数の絶縁層の間に導電性の銅箔層を挟んだ構造で、一般的には3層以上の配線層を持ちます。これにより、電源、信号、グラウンドなどの異なる回路を層ごとに分離でき、回路設計の自由度が大幅に向上しました。多層基板は、配線を複数の層に分けることで、高密度化を実現し、基板の小型化や高性能化に貢献しています。
技術要件
1.ビアホール技術:多層基板では、層間を接続するビアホール(貫通ビア、ブラインドビア、バリードビア)が重要な役割を果たします。これらは、配線層間の電気的接続を担い、精密な加工技術が必要です。
2.絶縁性と誘電率:各層の絶縁性を確保するため、絶縁材料の選定が重要です。また、高周波信号を扱う場合には、誘電率の低い材料が求められます。
3.積層技術:多層基板では、複数の層を正確に積み重ねる技術が求められます。層間のずれを最小限に抑えることが、基板の信号品質や性能に直結します。
4.熱管理:層数が増えることで、基板内部の熱が溜まりやすくなるため、熱を効率的に逃がすための設計が必要です。特に高性能な電子機器では、熱管理が重要な課題となります。
2.多層基板の設計技術および応用領域
多層基板の設計には、高度な技術と専門的な知識が必要です。各層の役割を明確に分け、信号干渉を防ぐために、層間の配置や配線パターンを最適化することが求められます。例えば、電源層とグラウンド層を隣接させることで、信号のリターンパスを短くし、ノイズを減らすことができます。また、インピーダンス制御も重要な設計技術の一つです。高周波信号を扱う場合、配線の特性インピーダンスを正確に設計することで、信号損失を最小限に抑えることができます。
応用領域
多層基板は、その高密度で高機能な特性から、様々な分野で広く応用されています。特に以下の分野で重要な役割を果たしています。
1.通信機器:5GやWi-Fi6などの高周波通信を支える基板設計において、多層基板は不可欠です。これらのシステムでは、信号の高速伝送と低ノイズが求められ、多層基板のインピーダンス制御やノイズ抑制技術が大きく寄与します。
2.自動車産業:自動運転技術や電気自動車において、制御システムや電源管理システムの高機能化が進んでいます。多層基板は、これらの複雑な回路を小型にまとめ、耐熱性や耐振動性を持たせるために重要です。
3.医療機器:超音波診断装置やMRIなどの高精度な医療機器にも多層基板が利用されており、信号の正確な処理やデータの高速伝送に貢献しています。
3.多層基板の今後の技術発展方向
多層基板技術は、さらに高度化しつつあります。今後の発展方向としては、次のようなトレンドが考えられます。
1.HDI基板(高密度配線基板):これまでの多層基板に比べて、さらに高密度で配線できるHDI基板が注目されています。HDI基板は、微細なビアと狭ピッチの配線を採用し、配線密度を大幅に向上させる技術です。特にスマートフォンやウェアラブルデバイスなど、極めて小型な製品に適しています。
2.高速・高周波対応:5G通信や自動運転、IoTデバイスなど、高速通信を必要とする分野では、より低損失で高周波に対応する基板材料や設計が求められています。これに伴い、誘電率の低い材料の研究や、ノイズを最小限に抑えるための積層技術がさらに進化するでしょう。
3.多層フレキシブル基板:フレキシブル基板の技術を多層化することで、より自由な形状や動的な環境に対応できる基板が開発されつつあります。これにより、電子機器の設計における自由度が格段に上がり、例えばウェアラブル技術や折りたたみスマートフォンの分野での応用が期待されています。
4.AI・自動化技術:AIや機械学習を活用した基板設計の自動化が進んでいます。これにより、設計者の負担が軽減され、短期間での開発が可能になります。また、シミュレーション技術の向上により、設計段階での不具合を早期に発見し、修正することができるため、コスト削減にもつながります。
4.考察とまとめ
多層基板は、電子機器の高密度化、高機能化、小型化に不可欠な技術であり、通信機器、自動車、医療機器といった幅広い分野でその応用が進んでいます。技術的には、ビア技術、インピーダンス制御、ノイズ抑制などが重要な課題であり、今後はHDI基板や高速通信対応の材料技術がさらに発展するでしょう。
また、AIや自動化技術の導入により、設計プロセスの効率化が進み、より高度な基板設計が短期間で行えるようになることが期待されます。多層基板の技術進化は、電子機器のさらなる発展を支える鍵となり、今後も重要な役割を果たし続けるでしょう。
学び続ける
PIDI-BOX01: JLCPCBがRaspberry Pi Zero 2WでモジュラーDINレールコントローラを可能にした方法
Raspberry Pi Zero 2Wによるガーデン灌漑の自動化:固定I/Oでは不足するとき 4年前、豊富なハードウェア開発経験を持つドイツ人の電子設計エンジニア、ヴォルフガング・マンスフェルド氏は、自宅のガーデン灌漑を自動化する商用ソリューションを探していました。しかし、自身のニーズに合うものは見つかりませんでした。そこで、自分で作ることにしたのです。 最初のプロトタイプは動作しましたが、PCBの製造コストが高く、イテレーションを続ける大きな障壁となっていました。そんな中、JLCPCBをKiCadコミュニティ経由で発見し、プロジェクトは新たな次元へ。Raspberry Pi Zero 2Wを基盤とした、完全にモジュラーでオープンソースのDINレールコントローラ「PIDI-BOX01」が誕生しました。 PIDI-BOX01 モジュラーDINレールコントローラ(Raspberry Pi Zero 2W搭載)をJLCPCBで製造 課題:成長が必要な灌漑システム 自動ガーデンは一度に完成しません。最初は2つの電磁弁から始まり、湿度センサーを追加し、温度プローブを足し、気づけば10個のデバイスを制御する......
4層基板と2層基板の違いとは?|用途別の選び方を初心者向けに解説
基板設計を始めると「2層基板で足りるのか、4層基板が必要なのか」という判断に迷うことがあるでしょう。 4層基板はコストが上がる一方、信号品質やEMI対策に大きなメリットがあるのです。 今回は、2層基板と4層基板の構造の違いから、用途別の選び方まで具体的な判断基準を解説します。 2層基板と4層基板の基本的な違い 2層基板は表面と裏面の2つの銅層で構成されており、すべての配線をこの2層に収める必要があります。構造がシンプルなため製造コストが低く、幅広い用途で使われる標準的な選択肢です。 4層基板は表裏2層に加え、内層に2層を持つ構成です。一般的なスタックアップは「信号層/グランドプレーン/電源プレーン/信号層」の4層構造で、内層の電源・グランドプレーンが信号品質の安定に大きく貢献します。コストは2層基板と比較して1.5〜2倍程度になりますが、得られる性能向上は設計の自由度を大きく広げます。 2層基板が向いているケース シンプルな回路・低速信号 LEDドライバ・温度センサー・単純なマイコン回路など、動作周波数が低くノイズの影響を受けにくい回路は2層基板で十分です。部品点数が少なく配線がシンプルであれば、......
プリント基板を自作するには?初心者向けに設計から発注までの流れを解説
「プリント基板を自分で作ってみたい」と思ったとき、最初に壁になるのが「どこから始めればいいかわからない」という問題です。実は、プリント基板の自作は設計ツールと発注サービスを使えば、初心者でも取り組めます。この記事では、基板自作の2つのアプローチと、設計から発注までの基本的な流れをわかりやすく解説します。 プリント基板の自作とは 「基板を自作する」には大きく2つのアプローチがあります。 1つ目は、銅張積層板にエッチング液を使って自宅で基板を手作りする方法です。手軽に試せる反面、精度に限界があり、細かい配線や両面基板の製作は難しくなります。 2つ目は、設計ツールで回路と配線を設計し、製造業者に発注して高品質な基板を作る方法です。現在はJLCPCBのような格安製造サービスが普及しており、少量・低コストでプロ品質の基板を手に入れられます。初心者には**「設計して発注する」**方法が現実的でおすすめです。 自作に必要なもの プリント基板を自作する際に必要なものを紹介します。 設計ツール(EasyEDA・KiCad) 基板設計には専用のCADツールが必要です。初心者に特におすすめなのがEasyEDAです。ブラ......
インピーダンス整合とは?|JLCPCBのインピーダンス計算機の使い方も解説
高速信号を扱う基板設計では、「インピーダンス整合」が品質を左右する重要な要素です。 インピーダンスが合っていないと、信号の反射やノイズが発生し、通信エラーや誤動作につながります。この記事では、インピーダンス整合の基本からJLCPCBのインピーダンス計算機の具体的な使い方まで解説します。 インピーダンス整合とは インピーダンスとは、交流電気回路における電気の流れにくさを示す値で、単位はΩ(オーム)です。プリント基板上の配線(トレース)にも固有のインピーダンス(特性インピーダンス)があり、信号源・伝送線路・受信側のインピーダンスが一致していない場合、信号の一部が反射して逆流します。 この「信号反射」が問題になるのは、主に数百MHz以上の高速信号を扱う回路です。USB・HDMI・DDRメモリ・高周波RF回路などがその代表例です。低速な回路では影響が小さいため、インピーダンス整合が必要かどうかは扱う信号の周波数によって判断します。 インピーダンスに影響する3つの要素 特性インピーダンスは設計段階でコントロールできます。影響する主な要素は以下の3つです。 トレース幅 トレースが太いほど特性インピーダンスは低......
FPCとFFCの違いとは?フレキシブルケーブルの種類と選び方を解説
基板の設計や電子機器の修理をしていると、「FPC」と「FFC」という2つの言葉に出会うことがあります。どちらも薄くて曲がる配線部品ですが、構造も用途も異なります。混同したまま選定すると、設計段階で手戻りが発生することも。この記事では、FPCとFFCの違いを構造・用途・選び方の観点から実用的に解説します。 FPCとFFCはどちらも「曲がる配線」混同されやすい理由 FPCもFFCも、薄くて柔軟性があり、狭いスペースへの配線に使われる点が共通しています。 スマートフォンやノートPCを分解すると、どちらも似たような薄いフィルム状の部品として見えるため、同じものと思われがちです。 ただし、大まかに言えば、FPCは「回路基板」、FFCは「ケーブル」です。 FPC(フレキシブルプリント基板)とは? FPC(Flexible Printed Circuit)は、ポリイミドフィルムを基材として、その上に銅箔で配線パターンを形成したプリント基板です。表面をカバーレイ(保護フィルム)で覆った構造で、厚さは0.1mm前後と非常に薄く軽量です。配線パターンは設計データをもとにエッチングで形成されるため、複雑な回路も一枚のフ......
SMT実装の品質管理と検査工程|不良を防ぐための基礎知識
SMT実装の品質管理と検査工程|不良を防ぐための基礎知識 SMT(表面実装)は現代の基板製造における主流技術ですが、部品の微細化・高密度化が進むほど、製造工程での不良リスクも高まります。不良を量産後に発見した場合、修正コストや納期遅延は甚大です。この記事では、SMT実装で起きやすい不良の種類と、それを早期に発見するための検査方法、JLCPCBの品質管理体制について解説します。 なぜSMT実装に品質管理が必要なのか 現代のSMT部品は極めて小型で、0402サイズ(1.0mm×0.5mm)以下の部品も珍しくありません。このような部品のはんだ接合不良は、目視では発見が困難です。また、BGA(ボールグリッドアレイ)パッケージのICは接合部が基板の裏側に隠れているため、外観検査だけでは品質を保証できません。 不良を工程の早い段階で発見するほど修正コストは小さく、量産後の市場クレームになれば損失は数十倍に膨らみます。品質管理は製品の信頼性を守るだけでなく、製造コストを抑えるためにも不可欠な工程です。 SMT工程で起きやすい不良の種類 SMT実装における代表的な不良を把握しておくことで、設計段階からリスクを減ら......