PCB構造の内側: レイヤー構成・スタックアップ・ビルドアップが最新基板性能を決定する仕組み
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プリント基板(PCB)は一見すると平らな緑色の板に見えますが、その内部には高度に設計された多層構造が存在します。
電子機器がより小型化・高機能化するにつれ、設計者は電気的・機械的要件を満たすために、材料選定やスタックアップを慎重に設計した多層基板を採用するようになっています。
本記事では、PCB性能を左右する基材選択、レイヤースタックアップ、ビルドアップ手法について、基礎材料からHDI(高密度配線)技術まで段階的に解説します。
あわせて、業界におけるベストプラクティスやコスト面のトレードオフ、そして現在標準化されている代表的なスタックアップ構成の比較も紹介します。

PCB構造を形成する基本要素
基材(サブストレート)と銅箔
すべてのPCBは基材(サブストレート)から始まります。これは基板の絶縁構造の中核です。
最も一般的なのはFR-4で、低コスト・高い機械強度・中程度の誘電率を持つ汎用材料です。ただし、高周波(RF)帯域では誘電損失(tanδ)が大きくなるという欠点があります。
そのため、RFやマイクロ波用途ではRogers系ラミネートが使用されます。Rogers材料は誘電率が安定しており、損失係数は約0.001と非常に低いのが特長です。ただし、コストはFR-4の約5~10倍に達します。
基材の上には銅箔がラミネートされます。この銅層の枚数がPCBのレイヤー数を決定します。
一般的な銅厚は0.5oz~2ozで、必要な電流容量に応じて選択されます。信号配線には薄い銅、電源配線には厚い銅が使われることが多いです。
コア材とプリプレグによる基本ビルドアップ
コア材とは、両面に銅が貼られた、硬化済みの基材シートです。基板構造の骨格となります。
たとえば1.6mm厚の基板は、1枚または複数のコア材から構成されます。
プリプレグは、未硬化の樹脂を含んだガラス繊維シートで、ラミネーション時に加熱・加圧され、コア同士や外層銅箔を接着します。
プリプレグの最終厚みは圧力や樹脂量に依存し、±10%程度のばらつきが生じます。
一般的な6層基板では、複数のコアとプリプレグをサンドイッチ状に組み合わせます。
コア vs プリプレグ(比較)
· コア:厚み精度が高く、インピーダンス制御に有利
· プリプレグ:隙間充填性に優れるが、単体では精度が劣る
· コアは「骨格」、プリプレグは「結合組織」と考えると分かりやすいでしょう。
PCBレイヤーとその役割
信号層と電源/GNDプレーン
信号層は配線やパッドを配置する層です。
一方、電源プレーンやGNDプレーンは、安定した基準電位を提供し、ノイズ低減や電源分配の役割を担います。
多層基板では、内層に連続した銅プレーンを配置するのが一般的です。
GNDプレーンは低インピーダンスのリターンパスとなり、EMIシールドとしても機能します。
電源層とGND層を隣接させるプレーンペアリングにより、並列板容量が形成され、電源ノイズの抑制に効果を発揮します。
レイヤー数が設計に与える影響
· 2層基板:低コストだが配線密度に制限あり
· 4層基板:
o Signal
o GND
o Power
o Signal
2層よりもインピーダンス制御・デカップリング性能が大幅に向上
→ コストは約30~40%増
6層基板例:
o Top (Signal)
o GND
o Signal
o Signal
o Power
o Bottom (Signal)
ほぼすべての信号層がプレーンに隣接し、高速信号に有利
8層以上:高密度・高信頼用途向け(コスト・製造難易度増)
レイヤー数はコストと性能のバランスを取る設計パラメータです。
内層と外層の違い
外層:
· 部品実装・コネクタ配置
· マイクロストリップ構造(片側が空気)
内層:
· 信号配線またはプレーン
· ストリップライン構造(上下が誘電体)
· シールド性が高く、高速信号向き
JLCPCBでは、GND・電源プレーンを内層に配置することを推奨しています。
最適なPCBスタックアップ設計
標準スタックアップ例(2~8層)

2層:Top / Bottom(信号)
4層:Signal / GND / VCC / Signal
6層:Top / GND / Sig / PWR / GND / Bottom
8層:Top / GND / Sig / PWR / PWR / Sig / GND / Bottom
層数が増えるほど、EMI抑制・リターンパス制御が容易になります。
対称性とバランスの重要性
スタックアップは上下対称に設計する必要があります。
銅分布が不均衡だと、加熱時に反りやねじれが発生します。
例:
L1とL6、L2とL5の銅厚・構成を揃える
インピーダンス制御とSI
インピーダンス制御(50Ω/90Ω差動)は、
· トレース幅
· 誘電体厚
· プレーン位置
によって決まります。
JLCPCBでは、HDI設計ガイドやインピーダンス計算ツールが利用可能です。
PCBビルドアップ方式と製造影響
HDI向け逐次ビルドアップ
HDI基板では逐次ラミネーションを使用します。
マイクロビア、ブラインド/ベリードビアを実現可能です。

フォイルビルド vs キャップビルド
· フォイルビルド:
一般的・低コスト・汎用
· キャップビルド:
外層にコアを使用
RF・マイクロ波用途向け(高安定性)

ハイブリッド・リジッドフレックス構造
· 異種材料混合
· リジッド+フレックス構造
· フレックス部はポリイミド・薄銅を使用
· 発熱部品はリジッド部に限定するのが一般的
構造が与える物理的影響
熱設計と機械強度
· 内層プレーンは放熱板として機能
· 層数増加=剛性向上だが熱応力も増大
· 対称設計が反り防止の鍵
コスト・サイズ・製造性のトレードオフ
· 層数増加ごとにコスト約30~40%上昇
· ただし基板面積削減で相殺可能な場合も
· JLCPCBの無料DFMチェックでは、
· 配線幅
· 間隔
· 放熱不足
などを事前に検出できます。
よくある質問(FAQ)
Q:PCBスタックアップとは?
A:銅層と絶縁層の積層構成のことです。
Q:必要な層数はどう決める?
A:配線密度、信号品質、予算によって決まります。
Q:GND/電源プレーンの役割は?
A:低インダクタンスのリターンパスとEMI抑制です。
Q:JLCPCBでスタックアップ確認は可能?
A:はい。スタックアップテンプレート、インピーダンス計算、JLCDFMツールを提供しています。
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