フレキシブルPCB設計に最適な材料の選び方
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フレキシブルプリント基板(Flex PCB/FPC)は、エレクトロニクス業界に革命をもたらしました。小型筐体の中に回路を高密度で実装でき、軽量かつ柔軟なフォームファクタを実現できます。FPCは、ウェアラブルデバイスから医療用インプラント、航空宇宙システムに至るまで、あらゆる分野で使用されています。
これらの回路は、機械的な柔軟性と電気的性能のバランスを取るために、特殊な材料に依存しています。
Flex PCBを設計する際には、基材、接着剤、保護コーティングの適切な組み合わせを選定することが極めて重要です。リジッドPCBについては多くの情報が蓄積されていますが、FPC設計に関する情報はまだ十分とは言えません。材料は回路の基盤そのものであり、信頼性に直接影響します。本記事では、Flex PCBで一般的に使用される材料を紹介し、用途に応じた材料選定の指針を解説します。
1. 基材材料:柔軟性の基盤
基材はFlex PCBのベース層であり、「フレキシブル」たる所以です。銅配線を支持し、基板の機械的・熱的特性を大きく左右します。FPCで主に使用される基材は以下の3種類です。
- ポリイミド(PI):業界標準
- ポリエステル(PET):コスト重視の選択肢
- PTFE(テフロン)およびLCP(液晶ポリマー)

1) ポリイミド(PI)
リジッドPCBにおいてFR-4が低コストかつ汎用性の高さから約70%を占める業界標準であるのと同様に、FPCではポリイミドがその役割を担っています。
ポリイミドは、優れた柔軟性、耐熱性、誘電特性を持つため、Flex PCBで最も広く使用される基材です。主に低〜中周波数の民生電子機器で使用されます。
主な特長:
- 高い耐熱性(短時間で最大260°C)
- 優れた寸法安定性
- 薬品・溶剤に対する高い耐性
2) ポリエステル(PET)
PETはPIよりも低コストで、要求条件の厳しくない用途に適しています。量産向けでコスト削減が重視される回路に多く採用されます。ただし、耐熱性はPIより低く(融点約260°C)、高温はんだ付け工程には制限があります。
主な用途:
- ウェアラブルデバイス
- 使い捨て電子機器
- 低消費電力センサー
特長:
- 良好な誘電特性
- 吸湿率が低い
- 大量生産・低ストレス用途においてコスト効率が高い
3) PTFE(テフロン)およびLCP(液晶ポリマー)
PTFEは非常に優れた誘電特性を持つ一方、最も高価な材料です。高周波信号の完全性や極端な耐薬品性が求められるニッチな用途で使用されます。主に研究用途、航空宇宙、医療用インプラント分野で採用されます。
他材料との特性比較については、前述の比較表を参照してください。
2. 接着システム:層を結合する要素
接着剤は、銅箔と基材の接合、さらにカバーレイや補強板(スティフナー)の固定に使用されます。接着剤の選択は、接着強度だけでなく、柔軟性や耐熱性にも影響します。一般的に使用される接着方式は以下の3種類です。
- アクリル系接着剤
- エポキシ系接着剤
- 接着剤レス構造
1) アクリル系接着剤
アクリル樹脂をベースとした熱可塑性または熱硬化性接着剤で、Flex PCBでは銅箔とポリイミドやPET基材の接着に広く使用されます。産業用途や民生用途の一般的なFPCに適していますが、長期使用ではアウトガスや吸湿の可能性があります。
特長:
- 優れた接着性と柔軟性
- 約150°Cまでの耐熱性
2) エポキシ系接着剤
高い耐熱性および耐薬品性が求められる用途で使用されます。非常に強固な接着力を持ち、180°C以上の高温にも耐えることができます。
特長:
- アクリル系より高い耐熱性
- 化学薬品・溶剤に対する優れた耐性
3) 接着剤レス構造
高信頼性用途では、接着剤を使用しないベースフィルムが採用される場合があります。この方式では、キャスティングやスパッタリングにより銅を基材に直接積層します。高精度ですがコストが高く、高密度実装や微細ピッチ部品を使用する基板に用いられます。
特長:
- 薄型構造
- 優れた寸法安定性
- 高速回路における信号品質の向上
3. 保護コーティング:カバーレイとオーバーレイ
カバーレイは、銅配線を環境要因から保護し、絶縁する役割を持ちます。Flex PCBでは、リジッド基板のソルダーレジストの代わりにカバーレイが使用されることが一般的です。
主な種類は以下の2つです:
- ポリイミドカバーレイ+接着剤
- 液状感光性ソルダーレジスト(LPI)
1) ポリイミドカバーレイ+接着剤
接着剤が塗布されたポリイミドフィルムで構成され、高い機械強度と絶縁性を提供します。繰り返しの屈曲にも耐え、クラックが発生しにくい特長があります。
2) 液状感光性ソルダーレジスト(LPI)
リジッドPCBのソルダーレジストに近い材料で、Flex PCB向けに最適化されています。自動化された製造工程に適しており、微細ピッチ部品にも対応しやすいのが特長です。
4. 材料選定におけるその他の考慮点
熱的要件
熱サイクルや長時間の高温環境に耐えられる材料を選択する必要があります。ポリイミドおよびエポキシ系材料は、こうした条件下で良好な性能を発揮します。
機械的屈曲
FPCの屈曲回数や使用期間は重要な要素です。動的屈曲用途では、薄く高い柔軟性を持つ基材が必要です。一方、静的屈曲用途では、やや厚みのある構造が適しています。
電気的性能
信号品質や高速伝送が求められる場合、誘電損失の低い材料を選択することが重要です。高周波やインピーダンス制御設計では、PTFEのような低誘電率材料が有利です。
まとめ
Flex PCBの材料選定に万能な答えはありません。ウェアラブルから航空宇宙用途まで、それぞれのアプリケーションには柔軟性、耐熱性、信号完全性に関する固有の要件があります。
適切な基材、接着剤、保護層を選ぶことは、電子設計者にとって非常に重要な工程です。各材料の特性と制約を理解することで、用途に最適化された高信頼性のFlex PCBを設計することが可能になります。
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