This website requires JavaScript.

フレキシブル基板構成及び微細配線におけるマイグレーション挙動の把握の説明

ブログ  /  フレキシブル基板構成及び微細配線におけるマイグレーション挙動の把握の説明

フレキシブル基板構成及び微細配線におけるマイグレーション挙動の把握の説明

Oct 27, 2024

フレキシブル基板構成及び微細配線におけるマイグレーション挙動の把握の説明

1.フレキシブル基板の開発経緯および構成

 フレキシブル基板(FPC:Flexible Printed Circuit)は、1960年代後半に登場し、配線の自由度が高く、軽量であり、可動性が求められる電子機器の進化に伴って開発されました。従来の剛性基板では対応しきれない、曲げや折りたたみが必要な用途に適しており、特に小型化や多機能化が進む現代の電子機器において、欠かせない技術です。フレキシブル基板は、特にモバイル機器、カメラ、自動車のセンサーやディスプレイ、医療機器などの分野で広く使用されています。

図1 JLCPCB製品イメージ図

構成

 フレキシブル基板は、一般的に以下のような構成を持っています。

1.基材:基板の基本材料として、ポリイミドやポリエステルなどの高い耐熱性と絶縁性を持つ材料が使用されます。これらの材料は、機械的強度がありながらも柔軟性を持ち、曲げや折りたたみに耐えられることが特徴です。

2.導体層:銅などの導電性金属が薄いフィルム状に加工され、パターン形成されています。この導体層が、電気信号を伝達する役割を担い、回路を形成します。

3.接着層:基材と導体層の間には接着層があり、これが各層をしっかりと固定する役割を果たしています。フレキシブル基板では、この接着層が曲げに対しても剥離しない高い強度を持つ必要があります。

4.保護層:基板全体を覆う絶縁フィルムやソルダーレジストが用いられ、導体層を外部の物理的ダメージや腐食から保護します。また、この層は、基板の絶縁性や耐熱性を向上させる効果も持っています。

技術要件

 フレキシブル基板は、一般的な剛性基板とは異なり、曲げやねじれに耐えるための柔軟性が求められます。これに加えて、高い耐熱性、耐久性、化学的安定性を持つことも重要です。特に、層間剥離防止や高温環境での耐久性、そして頻繁な曲げ動作に耐えうる強度を持つことが必要です。

 また、フレキシブル基板はその用途から、薄型化が要求されるため、非常に薄い導体層や基材の製造技術が求められます。薄さを維持しながらも、信号伝送の性能を保つ必要があるため、微細な配線技術や高精度なエッチング技術が不可欠です。

2.微細配線におけるマイグレーション挙動の把握と評価法

 フレキシブル基板の微細配線では、導体のサイズや間隔が非常に小さくなるため、電気マイグレーション(電流による原子移動や物質拡散)やイオンマイグレーション(高電圧下での金属イオンの移動)といった現象が問題になることがあります。これらのマイグレーション挙動は、特に高電圧や高温の環境下で顕著に現れ、導体間でのショートや抵抗の変化を引き起こし、基板の性能や信頼性を低下させる原因となります。

3.マイグレーション挙動の評価法

1.試験環境の構築:マイグレーション挙動の評価には、通常、基板を高温高湿度の環境下に置き、加速試験を行います。例えば、85°C/85%RH(相対湿度)という条件下で、一定の電圧をかけて挙動を観察することが一般的です。このような環境試験は、実際の使用環境を模擬することで、長期的な基板の耐久性を短時間で評価できます。

2.電気抵抗の測定:マイグレーションによる問題を検出するためには、微細配線間の電気抵抗を定期的に測定します。マイグレーションが進行すると、配線間の電気抵抗が減少し、最終的にはショートが発生することが確認されます。

3.表面解析技術:電子顕微鏡やX線分析を用いて、実際にマイグレーションが発生している箇所の観察も行われます。これにより、どのようなメカニズムでマイグレーションが発生しているのかを理解し、材料の選定やプロセスの改善に役立てられます。

4.技術的考察

 マイグレーション挙動を抑制するためには、配線材料や絶縁材料の選定が重要です。例えば、耐イオン性の高い材料を使用することで、イオンマイグレーションを防ぐことが可能です。また、配線パターンの設計においても、導体間隔を適切に設計し、過度の電界がかからないようにすることがポイントです。さらに、表面処理技術やコーティング技術も、基板全体の耐久性を向上させる手段として有効です。

5.フレキシブル基板の今後の技術発展方向

 フレキシブル基板の技術は、今後さらに進化し、さまざまな新しい応用領域で重要な役割を果たすと考えられています。以下の分野では特に注目されています。

1.ウェアラブルデバイス:フレキシブル基板の最大の特徴である柔軟性を活かし、人体に直接装着できるウェアラブルデバイスへの応用が進んでいます。これにより、医療用の健康モニタリングデバイスやスポーツ用品など、生活に密着したデバイスがさらなる進化を遂げるでしょう。

2.フレキシブルディスプレイ:折りたたみ可能なディスプレイの技術が進む中で、フレキシブル基板は不可欠な存在です。これにより、次世代のスマートフォンやタブレット、さらには拡張現実(AR)や仮想現実(VR)デバイスのさらなる発展が期待されています。

3.高周波対応:5G通信の普及に伴い、高周波信号に対応するフレキシブル基板の需要が高まっています。特に、低損失で信号伝送が可能な材料の開発が進められており、高周波通信デバイスでの応用が期待されています。

4.環境対応:環境負荷を軽減するため、リサイクル可能なフレキシブル基板や、環境に優しい製造プロセスの開発が進んでいます。これにより、サステナブルな技術としての価値が一層高まるでしょう。


6.考察とまとめ

 フレキシブル基板は、曲げや折りたたみが可能な特性を活かして、モバイル機器やウェアラブルデバイス、医療機器などの多様な分野で応用されています。その技術的な発展は、配線の微細化やマイグレーション対策を含む高精度な設計・製造技術によって支えられており、今後も5G通信やフレキシブルディスプレイといった新しい技術領域での需要が拡大することが予想されます。

 さらに、フレキシブル基板は環境への配慮が求められる中で、持続可能な技術としての発展も期待されており、技術者や研究者にとっては、これらの新しい課題に取り組むことが重要です。フレキシブル基板の進化は、私たちの生活をより便利で豊かにする技術革新の一翼を担っており、今後のさらなる進展が楽しみです。